ハローワークと求人サイト、うまく使い分けできていますか?

採用支援をしていると、よくこんな声を耳にします。

  • 「求人を出しても全然応募が来ない」
  • 「高い費用を払って求人サイトに掲載しても、採用につながらない」
  • 「ハローワークってもう時代遅れじゃないの?」

一方で、「ハローワークから応募があり採用できた」「求人サイトで理想的な人材に出会えた」といった成功談も少なくありません。
どちらが正しい、というわけではありません。
大切なのは、自社の業種や職種、求める人材像に合わせて、適切な手段を選ぶこと。
そして、求人情報そのものをしっかり作り込むことです。

今回は、私が社会保険労務士・採用定着士として現場で採用支援を行う中でお伝えしている、「ハローワーク」と「求人サイト」の違いや活用のポイントをご紹介します。

ハローワークの特長と限界

ハローワークの最大の利点は、なんといっても無料で掲載できる点です。採用予算に限りのある中小企業にとっては非常にありがたい存在です。

また、「求職者リクエスト」など登録中の求職者をスカウトできる独自の機能があるほか、地域に密着した求人相談体制や面接調整のサポートなど、ある程度の支援体制も整っています。現場職・ブルーカラー職や中高年層をターゲットとした採用では、一定の効果が見込めます。

ただし、IT系・事務系・サービス業や若年層向け求人になると、普及度・利用者数の圧倒的な差や、検索性、スマホ対応の面で求人サイトに劣るケースが多いのも現実です。また、ハローワーク=行政機関運営の媒体なので、フォーマットの制約や自由な表現ができないこともあり、自社の魅力を伝えきれないこともあります。

 

求人サイトの魅力と注意点

求人サイトの最大の魅力は、スマートフォンとの圧倒的な親和性にあります。現在、多くの求職者はスマホから仕事を探すのが当たり前となっており、特に20〜40代の若年層にとっては「スマホで検索して応募」が主流のスタイルです。

そのため、スマホでの閲覧・操作性が高く、写真や動画など視覚的に訴求できる求人サイトは非常に効果的です。職場の雰囲気や社員の人柄、実際の仕事風景を“見せる”ことで、求職者に「ここで働きたい」と思わせる強い動機づけになります。

さらに、近年ではInd○○dをはじめとする「求人情報専門の検索エンジン」への対応が、応募数に大きく影響しています。単に求人サイトに掲載するだけでなく、その求人がInd○○dや求人ボックスなどと連携しているかどうかによって、見てもらえる人数=接点数が大きく変わるのです。

ただし、求人サイトでは気軽に応募できることから、応募数が増える一方で、「ドタキャン」「書類未提出」「連絡がつかない」など、応募者の質に課題を感じるケースもよく聞きます。応募数の量を追うのではなく、求人原稿の内容や応募~面接までの対応を工夫し、質の高い応募者に出会える導線を作ることが重要です。

なお、求人検索エンジンには無料で掲載できますが、有料プランも用意されています。一定額の広告費を課金することで、表示順位やクリック率を上げ、効果が最大化する特徴があります。もっとも、有料無料を問わず大事なのは、求人原稿の内容をしっかり練り込むこと。求人原稿の内容が悪いと、いくら有料プランに課金しても応募は見込めません。

実際の現場で成果につながった3つの事例

求人の成果は「どこに出すか」だけでなく、「誰に・何を・どう伝えるか」によって大きく変わります。これまでご支援した求人でそれがよくわかる事例を3つご紹介します、

①【歯科医院】写真と言葉で「働きたい職場」を表現、難関職を採用

ある歯科医院では、自社HPで求人を掲載しても応募が来ず、特に歯科衛生士の採用に長く悩んでおられました。
私は院長とのヒアリングを重ね、さらに既存スタッフへのアンケートも実施。その中で見えてきた「スキルアップの機会」や「人間関係の良さ」「成長支援の制度」「他院との違い」などを、写真や言葉で丁寧に表現した求人検索エンジン連携の求人サイトを構築しました。

その結果、これまで採用が難しかった歯科衛生士の応募があり、非常に優秀な人材の採用に成功。さらに歯科助手についても高いスキルを持った応募者と巡り合い、現在ではいずれも医院のコア人材として活躍しています。

 

②【建設業①】媒体と原稿の“使い分け”で採用へつながった好例

こちらの建設会社では、現場数の増加と社員の高齢化を受けて、現場職人の増員が急務となっていました。
しかし、社長が独自で作成したハローワーク求人票では応募はゼロ。また、広告会社に頼んだ原稿も実態に合わず、毎月、広告費だけが積み上がっている状態でした。

私は求人検索エンジン連携の求人サイトを新たに作成。併せて、募集職種の特性からハローワークも十分活用できると踏み、ヒアリングを通して求人票も一からリライト。当初は応募がなかったものの、現場で「求人見ましたよ」と声がかかるようになり、やがてハローワーク経由で応募・採用に成功。
応募者は「求人サイトで詳しい情報を見て、この会社ならと思えた」と語っており、両媒体の併用が効果を生んだ事例です。

 

③【製造業】中高年・未経験層をターゲットにした求人で好人材を確保

ある製造業の事例では、未経験者や40代以上でも可能な業務内容である点を活かし、中高年層向けの求人設計を行いました。
求人票には、「重労働が少なく未経験でも取り組みやすいこと」や、「愛知県と隣接県の境にある立地を活かし、隣県から通いやすいこと」などを丁寧に記載。

結果、住設業界で働いていた隣県在住の中高年の方が、「休みが少なく重労働に疲れていた」と転職を希望し、応募・採用に至りました。未経験入社でも活躍している先輩社員の声や、現職の悩み・通勤の不安を解消できることが、求人原稿を通して伝わり、決め手となりました。
この方は未経験ながら非常に真面目で、今では既存社員や顧客からも信頼される存在となっています。

よくある「もったいない」求人の例

  • 求人広告の営業担当者に言われるがまま高額な広告費を払い続けている
  • 応募が来ないからと焦って求人内容を見直さずに出し続けている
  • 応募数ばかりに一喜一憂し、採用後の定着を考えていない
  • 誰に来てほしいか(ペルソナ)が明確でない
  • 「自社で働くとどうなれるか」が伝わっていない
  • 写真や社員の笑顔といったビジュアル情報がない
  • 競合と比較して自社の魅力が埋もれている

こういった点を改善するだけでも、求人効果は大きく変わります。

 

採用は「経営課題」です

採用は単なる人事業務ではなく、経営そのものに直結する重要なテーマです。売り手市場が続く今、企業が選ばれる側になっています。

「ここで働きたい」と思ってもらえるよう、求人内容、応募対応、面接の雰囲気など、すべてにおいて真剣な姿勢が求められます。

まとめ:特性を見極め、賢く使い分ける

ハローワークにも、求人サイトにも、それぞれの利点と限界があります。大切なのは、それぞれの特性を理解した上で、自社の業種・職種・ターゲット層に応じて最適な手段を選ぶことです。

そして、「どんな人材が欲しいのか」「自社の魅力は何か」「どんなことができる仕事か」を明確にし、それがきちんと伝わる求人づくりを行うこと。

採用は一度きりではありません。長く活躍してくれる人材と出会うために、今一度、求人の出し方を見直してみませんか?