先日このようなニュースがありました。
◆25年春季交渉、愛知の賃上げ率3月末5.6% 中小は5.28%(日本経済新聞 25/04/09)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD0715S0X00C25A4000000/
2025年春季労使交渉における愛知県の賃上げ率は、過去最高の5.6%。
中小企業でも平均5.28%と、例年にない高水準となりました。
この状況は、中小企業経営にどのような影響を与えるのでしょうか?
社労士としての実務経験をもとに、リアルな視点から解説します。
「相場賃上げ」による人件費圧力の増大
まず明確なのは、人件費総額が急速に増加していること。
単純に5%の賃上げでも、賞与や各種手当、社会保険料を含めると、実質的な人件費上昇は7〜8%になることも珍しくありません。
特に、従業員数が10〜50名規模の企業では、人件費のわずかな変動が利益に直結します。
収益構造が脆弱な企業ほど、このインパクトは大きくなります。
「採用と定着」のカギになる給与水準
一方で、賃上げは「人材確保」の有力な手段でもあります。
人手不足が深刻化する中、求職者の給与への関心はこれまで以上に高く、
「安定して昇給する企業かどうか」が選ばれる理由になりつつあります。
私のクライアント企業でも、昇給ルールや評価制度を明確にし、年2回の見直しを導入したことで、離職率が大幅に改善した事例があります。
「一律の昇給」から「戦略的な配分」へ
賃上げが経営負担になることを懸念する声もありますが、全員を一律に上げる必要はありません。
評価制度を設けて、貢献度やスキルに応じた昇給配分をすれば、限られた予算内でもメリハリある人件費戦略が可能になります。
むしろ、このタイミングで制度を見直すことで、業績と人件費のバランスが取れた経営基盤を築くことができます。
社労士として伝えたい「制度整備」の重要性
制度を整えることは、“守り”ではなく“攻め”の手段です。
場当たり的な対応ではなく、中長期的な視点で「どんな人に、どう報いたいか」を明文化することで、従業員の納得感とモチベーションが生まれます。
また、トラブルの予防や、助成金活用の基盤づくりにもつながるため、今後の人件費戦略には“制度の設計”が不可欠です。
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賃上げは避けられない流れになりつつありますが、
その中で経営者ができることは、「備え」と「設計」です。
人を雇うこと、育てることにお悩みの経営者の方、
人件費の戦略的な見直しをお考えなら、社労士の視点をぜひ活用してください。